IPS e.maxプレスは天然歯に近い審美性と強度をほこる
皆様、こんにちは。坂井歯科の坂井でございます。
私は食べる事が大好きで、特に甘い物には目がありません。お饅頭の袋を空けると全部食べてしまったり、旅先で美味しい食事を出されるとおかわりを何度も繰り返したり。食欲は人間の3大欲求と言われるだけあり、抗う事はなかなか難しかったです。
そんな私も「前期高齢者」というカテゴリーに入る年齢となったので健康管理には気をつける必要が出てきました。健康診断の結果を見てもそれは明らかで若い頃のように無茶な食生活をしていればいずれ身体を壊す事は明らか。
なので、現在は粗食を心がけております。
野菜、魚、海藻、果物、身体に良いものを中心に栄養素を意識した食生活を続けると体型はどんどん変化していくので面白いです。粗食は特に人間の免疫系に作用するので最近体調もいいです。問題はこれがどこまで続けられるかですが、院内の届く甘いお菓子の誘惑と日々格闘しています。
ここまでは本題の前置き。
e-maxの特徴に迫る
e-maxは「empress max」エンプレスマックスの意味を持つシステムで、ニケイ酸リチウムガラスセラミックを主成分にしたセラミックの種類です。ガラスで出来ていることからわかるように、非常に透明感があり、色調がとても綺麗です。本来の天然歯と同じか、それ以上に綺麗な色調を再現できるので審美性に優れており、「審美性」「耐久性」を兼ね備えた材質です。
天然の歯は先端の透明度が高く、歯肉に近いほど透明度が低くなりますが、天然歯は歯肉に近い部分でも微妙に透明度はあります。
この微妙な透明度まで再現できるのがe-maxです。
審美性が高いため、主に前歯の治療に使用するケースが多いですが、もちろん奥歯にも使用ができます。表面が滑沢なので汚れや細菌が付きにくく、長年使用しても変色はほぼありません。
オールセラミックは虫歯になりにくい
細かな話しで恐縮ですが金属かオールセラミックで治療される際に知っていただきたいことがあります。
合着と接着。
すなわち、どのように被せ物と歯はくっていているかです。合着も接着も、歯と補綴物の間にセメントを入れ、硬化することにより固定化されるということは同じです。ただしその原理は全く異なり、接着が可能なセラミックはかなり有利です。
金属をくっつける合着とは、歯と補綴物の間の凹凸部分にセメントが入り、固まるとくっついてとれないようにする機械的な原理をいいます。この場合、長い年月を経てお口の中でセメントが溶け出していまい、補綴物が脱離してしまう原因になります。さらに、補綴物が脱離しなくとも、セメントが溶けて歯と補綴物の間に隙間ができることによって、その隙間から虫歯菌が入り込み新たに虫歯になる可能性があります。合着とは、はまっているだけで歯と一体化しているわけではありません。
その一方でセラミックをくっつける接着とは、歯と補綴物が接着剤の化学的な結合によって吸着する、化学的な原理のことをいいます。年月が経ってもお口の中でセメントが溶け出すこともありませんので、隙間ができず新たな虫歯ができる原因を防ぐことができます。歯と補綴物が一体化するので隙間ができないのです。
虫歯になりにくいということは歯の寿命を伸ばせることにつながるので、とても大切な要素だと感じております。
e-maxは天然歯に近い
e-max最大の特徴は、柔らかすぎず、硬すぎないことで、強い力がかかった場合、ご自身の歯を傷める可能性が低いということです。最近特に用いられる事の多いジルコニアセラミックは相当高い強度を持っているのでほぼ割れません。よって重宝されますが、e-maxは天然歯にとても近い硬さを持っています。
数字で比較してみましょう。
強度 MPa(メガパスカル)
ジルコニア:800〜1000MPa
e-max:360~400Mpa
天然歯:350MPa
e.maxは天然歯と近い強度がある事がわかります。この事から、当院では前歯はe-max、奥歯はジルコニアという使い分けをする事が比較的多くなりました。
天然歯は長年噛んだりすることによって摩耗していきます。天然歯に近いe-maxも同じように摩耗性を持っているので、噛み合わす歯が天然歯でも安全性の高い材質と言えるでしょう。同じ硬さ同士がぶつかってもどちらかが一方的に摩耗しません。
金属アレルギーの心配もありません(これはジルコニアも同様)。
セラミック治療は進歩する
従来あったオールセラミックは、セラミックの粉と水を混ぜ合わせ高温で焼いて作成していましたが、水分内の不純物や技工所の空気中の粉塵などが入り込み、出来上がったセラミックに不純物や気泡が混ざってしまうことがありました。品質にバラつきがあった事は事実です。
ところが、e-maxは専門の工場であらかじめ作成されているセラミックブロックを使用するので、不純物が入り込む心配がなく、純度の高い被せ物や詰め物を作成することができるようになりました。品質のバラつきはほぼありません。
しかしながら、強度はあるものの衝撃的な力で割れてしまうという弱点もあります。噛む力の強い方が奥歯にe-maxを入れると割れてしまう可能性が高くなるでしょう。
そして、歯を削る量が多くなる場合もあります。多くの場合において、削りすぎてもダメですし、逆に削り足らなさすぎても補綴物の脱離や二次虫歯の原因に繋がります。
e-maxをお考えの場合は、どの程度の削り方が妥当なのか治療前に医師とよく相談する必要がございます。きちんと検査、審査、診断して治療を行えば、安心して使っていただける材質です。
このようにオールセラミックにもジルコニアやe-maxといった種類があり、治療する部位によって、適応不適応がございます。e-maxは被せ物や詰め物、ラミネートベニアといったような1本や2本などの審美的で高強度の単冠修復にとても適しています。何よりも前歯部においては他を寄せ付けない審美性を誇ります。
ジルコニアは強度がかなり強いのでブリッジやインプラントにも適しています。
それぞれ長所・短所がありますので、患者様のお口の中の状態、要望などをしっかりと考慮して使い分けたいと考えておりますので、担当医としっかり相談して決めていただければと思います。
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